【小説】東京テルマエ学園 第2章 16話「アイドル部、ただ今発進中!」 前編

「せーのっ! ワァーン、ツーゥ、ワァーン、ツー、はい! ワンツーワンツー! そこ、テンポが遅れてるよ!」

汐音の手拍子に合わせて、覚えた振り付けを踊る。何度も注意された指の先や体の動きを意識して。

できなくて寮へ帰ってからも七瀬に教えてもらいながら練習したステップは、おぼつかないながらも初めて成功した。よし、と心の中でガッツポーズをした瞬間に振り付けを間違えてしまって、じろりと汐音に睨まれる。

パンパンパン、と三度の大きな拍手のあと、汐音は首を振りつつ音楽を止めた。

「あーもう、一旦休憩! 疲れたからってみんな顔に出しすぎだよ。お客さんからアンコールされるのってパフォーマンスが全部終わった後でしょ? 疲れたからできません~、疲れてるからちゃんと踊れなくても許してね~なんて言うつもり?」

ぜえぜえと息を切らせてその場に崩れ落ちるメンバーへ呆れたようにため息をついて、汐音はレッスン風景を広告用に撮影していた八郎と二郎の方へと歩いていった。きっとビデオを見返してメンバーへ指導する内容を考えるのだろう。

入れ替わりにマネージャーの渡がやってきて、メンバーへぽいぽいとタオルを投げる。そんな適当に扱われたタオルを手に、ぽうっと渡へ見惚れる新メンバーの後輩たち。アキ達はもう慣れてしまっているが、やはり渡は人気があるのだなと再確認する光景だ。

「ほんっと、ダンスにだけは厳しいわよね……」

受け取ったタオルで溢れる汗を拭いながら七瀬が言う。

「あぁーしんど。言ってるこたァ真っ当だから、従うほかねェけどなァ」

レッスンスタジオの床に倒れこんだ穂波はげんなりした様子で天井を見上げていた。涼香と圭も体力回復に努めているのか、ぐったりと床に倒れたまま口を開かない。

アキもダンスで火照った体を冷まそうと床に転がる。ひんやり冷たい床がとても心地良い。

ほう、と息をついたところで、アキの顔の前に複数のレッスンシューズが並んだ。不思議に思って見上げると後輩である一年生が4人立っていた。

「せんぱぁい、ちょっとお話いいですかぁ~?」

一番前に立っていた女の子が甘ったるいような猫撫で声でアキを誘う。下から見上げても迫力のあるおっぱいをずいっと前に突き出して、にっこりと笑った。

体を起こすアキ、不穏な空気を察して七瀬と穂波もそばへ寄る。

「どうしたの? ええと、名前は……」

「岡本千秋でぇす! それからこっちはぁ~、えっとぉ~、誰だっけぇ?」

「1Bの菊島麗華です」

「突然押しかけてしまい申し訳ございません、1年A組に在籍しております川島由香と申します」

「A組、北見早苗です!」

「あ、はい……」

歯切れの悪い返事をしたアキを見て、七瀬と穂波は「あ、これ名前覚えられなかったな」とすぐに気づいた。アキは気を取り直して笑いかける。

「えへへ、先輩って呼ばれるの、なんだか嬉しいな。どうかしたの?」

「あのぉ~、思ったんですけどぉ~。なんで汐音先輩がダンスレッスンの先生役してるんですかぁ~?」

「汐音はチアダンスで日本代表にもなった子だからね。ダンスのことはよくわかってるからコーチ代わりをしてもらってるの。他にダンスに詳しい人がいなくてね」

七瀬が説明してやると、千秋は不満を表すようにぷうと頬を膨らませてみせた。そのままぷいっと顔を背け、わかりやすく怒りを伝えてくる。

その動作は愛らしい顔つきと相まってとても可愛らしく見えたが、逆にどうすれば可愛く見えるのか計算されているのが丸分かりで、あまりのぶりっ子ぶりに思わず穂波の口元が引きつった。

「それっておかしくないですか? ただ1年早く入学したっていうだけの先輩なのに、先生でもないのにあんな偉そうに指示出して。みんな疲れてるの分かってるのに、休憩だってなかなか入れませんでしたよね?」

怒ってますよーとアピールして黙り込んだ岡本千秋に続いて口を開いたのは北見早苗だ。ぱっちりと大きな目が不満を湛えてアキを射抜く。目力の強さにたじろいだアキの背中を七瀬がそっと支えてやった。

先輩を怖がらせてしまった、とすぐさま気づいた北見早苗は慌てたように両手を振って「アキ先輩に怒ってるんじゃないですから!」とポケットから飴を取り出してアキの手に握らせた。どうやら目力が強いことは自覚しているらしく、少しでも優しい印象にしようと常にお菓子を持ち歩いているらしい。

わぁい飴だ、と喜ぶアキ、ほっとしたように微笑む北見早苗を見て、七瀬はどちらが先輩なのかと額を押さえる。

「汐音先輩が…………」

話を続けようとしていた川島由香は飴を貰って喜ぶアキを見て、なぜか焦ったようにズボンのポケットを探り「申し訳ありません、すぐに戻ります!」と離れていったかと思うと、自分の荷物をごそごそして戻ってきたその手にはポッキーの箱。

どうぞとアキへ両手で差し出す川島由香にようやく合点がいった穂波は「いや、エサやらねェと話ができないわけじゃねエから」と突っ込んだ。アキはお菓子が貰えて素直に喜んでいたが。

「汐音先輩が指導してくださっているのは本当に有難く思っております。けれど汐音先輩はあくまで同じチームメンバー、あのような強い言葉で指導されるとこちらも積もっていくものがあるのです。指導されるなら、やはり先生の方が素直に指導を受け入れられます」

こほん、と咳払いして、改めて話した川島由香の言い分は最もだった。

汐音と一年間付き合ってきた七瀬と穂波でさえ、レッスン中の汐音の言い様はかちんとくることもある。普段優しい圭だって、レッスン中は汐音と何度も言い争いをするほどだ。汐音の性格を知らないチームの新メンバーだと尚更だろう。

「うーん……確かに汐音ちゃんの指導はちょっと厳しいけど、それってわたし達がちゃんと出来てない所為もあるから、汐音ちゃんだけが悪いとは言えないと思うんだよね……」

言葉を選んでアキが説得しようとするが、菊島麗華は困ったように首を振った。

「ちゃんと出来てないって言いますけど……」

「あ、れーかちゃんだ! 気づかなかったや、今日も可愛いね!」

「いやいやそんな事ないです、すみません。えっと、先輩はちゃんと出来てないって言いますけど、私達まだ入部して1ヶ月も経ってませんよね? 入部するまでダンスなんて踊ったこともなかった素人が、ダンスに精通してる汐音先輩の求めるレベルまで追いつくのはすごく難しいと思うんですよ」

空気の読めないアキが麗華を見つけて素直に賛辞を送り、麗華は律儀に一度謙遜を挟んでから話を続ける。優しい猫目と誰からも好かれるような可愛らしい顔立ちが印象的で、人の顔と名前が覚えられないアキでも彼女のことは覚えていた。

「う~~ん……」

後輩から指導改善を直談判されて、アキは七瀬と穂波と顔を見合わせる。訴える内容は確かに汐音の困った部分なので、どう説得すればいいかアキはうんうん唸って考えた。

ふう、と聞こえるようにため息をついた穂波はじろりと後輩を横目で見やる。

「要は、慣れないダンスを頑張ってンのにただの先輩でしかない汐音にギャーギャー文句つけられンのが気に入らねエから何とかしろって言いてエんだろ、アンタらは」

「えぇ~、千秋そこまでは思ってないですぅ~! 他の子はどうか知らないけどぉ~」

復活した岡本千秋が顔の前で両手を振るのをちらりと見た穂波は、またため息。

「確かにアイツの言い方は悪いし、真面目にやってンのに上達しねェことをグサグサ責められンのは嫌だよなァ、気持ちは分かる。だがな、それを本人に言わないどころか、本人がいねエこと確認してリーダーに直接グチるのは、ちょいと筋が通らないんじゃねエかい?」

「それは……」

汐音の性格からして、話をしても「文句言われたくないなら、言われないように上手になればいいんじゃん?」と一蹴されるだけだと短い付き合いながらも理解していたのだろう、だから4人はわざわざ汐音が離れたのを見計らってアキのところへ来たのだ。

押し黙る4人へ大げさにため息をついてみせた穂波は、入口横に貼られているスケジュール表を顎で示す。

「それに、初のアイドルライブは今週末なんだ。汐音の指導にも熱が入るってもんさ。汐音の文句を言う暇があるってこたァ、もちろん自分のパートは完璧に踊れるように仕上がってるンだよなァ?」

アイドル甲子園へ出場するとなると、必要なのは活動実績だ。

チームを組んで初めての活動はアイドル甲子園、ではあまりにも経験が無さすぎる。後輩である新メンバーが加入したのを機に、マネージャーの渡がどこかでライブをするのはどうかと提案したのだ。

ゆかり女史に相談すると、ツテを使っていきなり大きなライブハウスを貸し切ろうとしたので慌てて止めた。さすがに初めてのライブで大きなライブハウスが会場ではハードルが高い。

みんなで話し合った結果、メンバーの実家でちょっとしたイベント扱いで出させてもらうのが一番良いのではないかという話になった。

地方ではメンバー全員が移動するための旅費が馬鹿にならないので東京周辺、ということで、浅草出身の穂波の実家の銭湯と、東京にも支店を構える八郎の実家『なにわ温泉物語』へお願いすることになった。

『なにわ温泉物語』では大広間に大きなステージがあり、毎日何かしらのイベントを行って集客している。日程調節が必要だと八郎が実家とやりくりしている間に、穂波は実家へ一本電話を入れたかと思うと「いつ来てもらっても大丈夫だってよ」と親指をたてた。

そうして決まった東京テルマエ学園アイドル部の初ライブが今週末というわけだ。

時間が無いというのに、文句を言っている暇はあるのかと穂波は言外に含ませる。

「あ~~っと、千秋やること思い出したのでもういいでーす、戻りま~すぅ」

穂波の言葉に視線を泳がせた岡本千秋はぺろりと舌を出してさっさと逃げ出してしまった。彼女に声をかけられてついてきたのだろう他の3人も、慌てたように頭を下げて岡本千秋を追いかける。

4人を見送って、アキはほっと胸を撫で下ろした。

「ありがとう穂波さんー! ごめんね、わたしリーダーなのにちゃんと説得できなかったよ……」

「さっすが穂波さん。ズバッと切り込んだのカッコよかった!」

「気にしなさんな、仲裁役を買って出たの私だからなァ。にしても、イキの良いのが入ってきたね」

「普通不満があっても直接リーダーにまで言いに来ないものよね。よっぽど自分に自信があるんでしょ」

特にあのぶりっ子、と七瀬が横目で1年生の集団を見やる。アイドル部だけあって外見が良い子ばかり入部してきたが、外見が良いことと性格は別問題だ。トラブル起こさなきゃいいけど、と七瀬はため息をつく。

そこへ件の汐音が戻ってきて、持っていた書類をひらひらと揺らした。

「アキー、初ライブのメドレー編成で変更点があったから報告したいんだけどー」

メドレー編成と聞いて、体力回復に努めていた涼香と圭も体を起こし、みんなで汐音の持ってきた書類を覗き込んだ。

東京テルマエ学園アイドル部の持ち歌は、竜馬に作ってもらった1曲しかない。なのでJ-POPの人気アイドル曲を数曲カバーし、持ち歌は最後の締めに持ってくる編成だった。

「メドレーの曲の繋ぎのところがさ、どうしても一ヵ所バタついちゃうところがあるんだよね」

汐音がここだと示した曲は、確かに曲調ががらりと変わる。

曲ごとに前後のメンバーが入れ替わるアキ達も、入れ替わっている途中に一番盛り上がるサビの部分が当たってしまうので、入れ替わるスピードを早めたり入れ替わりながら手拍子をしたりと、どうにかサビを盛り上げられないか試行錯誤している最中の部分だった。

「で、曲調が似てて繋ぎやすいのを1曲新しく挟もうかってことになったんだけど、これ以上全員に負担かけたら崩れちゃうでしょ。だからここは、うちら2年生だけで曲を踊ろうと思って」

「わたしたちだけ?」

「曲は?」

「セーラー服まで脱がさないでって歌知ってるよね? ちょっと昔の歌なんだけど、それが一番次の曲との曲調が合うんだ。いまはだーめーよ、がまんしてよね~までだからホント1フレーズなの。踊りも本家のまんまでいくから激しくないし、むしろ可愛さを出す感じだから、そこまで動きを合わせなくてもいいし」

昔の曲と汐音は言うが、アキ達みんな知っているアイドル曲だ。年末や何かの折に、今でも特集が組まれる懐かしい曲の中に必ずランクインしている歌だった。

可愛らしい振り付けと合唱が印象的だが、その可愛らしさを出すためにあえてメンバーの動きをずらすというのは戦略として合っていると思う。

「その歌なら知ってるけど、え、わたしも歌うの!?」

「あったり前でしょー? 涼香がメインボーカルなだけで、メンバーみんなも歌うんだよって歌うパートの割り振りしたよね?」

当然の汐音の指摘にアキは言葉を飲み込む。確かに、アイドルなのに歌っているのは一人だけで、周りのメンバーは踊るだけ、というのもおかしな話だ。歌って踊るからこそアイドルなのだ。

それでも歌うことがあまり上手ではないと自覚しているアキはいつもの癖で俯いてしまう。そんなアキの頭をぽこぽこ叩いた汐音は壁の時計を確認しながら頷いた。もうすぐ休憩は終わりらしい。

「アキってほんとバカだよねー。リーダーなんだから何でもやらなきゃじゃん。アキがイヤだって言っても、これはもう決定事項だかんね! レッスン終わったら2年だけ追加練習だからよろしく~」

メドレー編成の変更を伝えるためマネージャーの渡のところへ向かう汐音を見送りながら、アキは七瀬に泣きついた。

「ど、どうしよう七瀬ぇ……!」

「こればっかりはしょうがないわよ。頑張って練習しよ」

「けっぱるべアギちゃん!」

七瀬と涼香から励ますように肩を叩かれ、アキはがっくりと項垂れた。

迎えた初ライブ当日。昔ながらの銭湯にステージは無いので、銭湯の店先を借りることになった。スポンサーの八郎がスタッフを連れて音響やセットの準備をしている間にアキ達は最終チェックをする。

店先で1曲だけ踊ってみてメンバーとの距離感や、入れ替わる際にぶつからないか、観客との距離などを確認して、そろいの衣装に着替える。

格好良いよりもアイドルらしい可愛さを重視した衣装は制服をモチーフとした学生らしいデザインで、色は柔らかいピンクを基調。プリーツのかかったスカートは踊るたびにひらりひらりと舞う。パンツが見えそうで見えない丈がアイドルらしい。濃い桃色のジャケットの上からメタリックシルバーのベルト、白いブラウスに黒のリボンタイをきゅっと締めて出来上がりだ。

色がピンクな分、甘すぎないデザインが可愛い衣装に「八郎もたまにはいい仕事するじゃない」と緊張していたはずのメンバーもご満悦だ。

ライブ開始間際になるとちらほら人が増えてくる。八郎と二郎がSNSを使って宣伝していたが、客の入りはあまり良くない。宣伝に興味を引かれて来たのだろう若い人が何人か、それと塩原温泉の常連の年配客と、客層がかなり離れている。

知名度も無いし、初ライブなんてこんなものだろうと渡は肩をすくめた。

「まずはアイドル部結成して初のライブだ。実績作りも大事だが、お前らが楽しめるのが一番だと俺は思ってる。気負わず行けよ」

渡の低いテノールが緊張していたメンバーの、アキの胸にすとんと落ちる。

そうだ、自分達が楽しまなくてはお客さんが楽しめるはずもない。汐音にあれだけ扱かれたのだ、ダンスも歌も完璧、とまではいかないだろうが、恥ずかしくない出来になっているはずだ。あとは、自分達が楽しむだけ。

「大丈夫だよみんな! 初ライブ、成功させようね!」

アキが拳を突き上げてみせると、メンバーの顔にも笑顔が戻った。

そうして始まった、東京テルマエ学園アイドル部初のライブ。ドラムシンバルの合図とともに、涼香がすうっと息を吸った。

「ワン、ツー、スリー、フォー!」

伸びやかな涼香の歌声が空に響く。簡易ステージの両脇に設置した大きなスピーカーからアップテンポの曲が流れ出す。

秋葉原の会いにいけるアイドルの曲から始まって、ダンスユニットのポップな曲、秋葉原から派生した地方のアイドルグループの爽やかな夏歌、笑わない地方アイドルグループの力強いカッコいい曲に続き、セーラー服まで脱がさないでをアキ達2年生だけでワンフレーズ、週末ヒロインを自称するガールズユニットのデビュー曲、おはよう娘のアップチューン曲を踊りきり、最後に竜馬が作ってくれたアイドル部の持ち歌を披露した。

涼香の持ち味を生かして曲をラップ調にアレンジし、アキ達もテンポの速い曲をミスすることなく踊りきった。

竜馬の曲を踊り終わったときには大きな拍手と何ともいえない達成感で全身が痺れた。これがライブなのだとアキは身をもって実感する。

けれど、他のメンバーは達成感を覚えつつも浮かない顔だった。ライブが終わって撤収したアキ達を迎えた渡もだ。

アキは自分が気づかないうちに何かやらかしてしまったのかとおろおろしたが、渡は首を振る。汗を拭いながら、ため息をつきつつ七瀬が言った。

「お客さん、途中でほとんど帰っちゃったわね」

言われて初めて、アキは気づいた。ライブが始まったときには多くいた銭湯の常連客である年配の人たちが、終わったときにはほとんど姿を消していたことに。

最後まで残っていたのは、八郎の宣伝で興味を持って見に来てくれた若い人ばかりだった。その人たちも、ライブが始まったときより数を減らしていたけれど。

汗で湿った前髪をかきあげて穂波が言う。

「温泉に来るのは大体が年配客だから、メインターゲットに逃げられちまったのはちっと困ったなァ」

「わ、わだすがぢゃんと歌えなかったから……」

「いやいや涼香の歌はさいっこーに上手いよ! じゃなくて、何ていうんだろ、客層が違ったというか……」

「一番聞いてほしい相手に聞いてもらえんかったっちゅうことやね」

おどおどと落ち込む涼香の肩を七瀬が叩き、圭が首を傾げて続けた。

まさに圭の言うとおり、ライブをして喜んでもらいたかったのは、常連客である年配の人たちだ。その人たちが早々にこの場を去っていたことは由々しき事態だと渡は顔を歪める。

新メンバーの後輩たちも複雑そうな表情で顔を見合わせている。そこへ空気を切るような手拍子がぱんぱんと響いた。

「はーい、反省は後々! 今はさっさと撤収するのが先でしょー? 立つ鳥跡を濁さず! いつまでもここでたむろってたらジャマジャマ!」

不機嫌そうな汐音はそうメンバーへ一喝したかと思うと、さっさと女湯の脱衣所へ入っていく。

全力でメンバーを指導してくれた汐音も、今回の事は不満なのだろう。それでも気持ちを切り替えて、初ライブが成功と言い切れない結果に戸惑うメンバーへ撤退を促してくれたのはさすがだとアキは思った。

メンバーみんなで着替えをし、店先を片付け、穂波の両親へライブをさせてくれたことへ全員で頭を下げて感謝をしてから、テルマエ学園へ戻る。

初めてなのだからパーッといこう、と八郎が用意してくれていた貸切バスの中は、まるでお通夜のように重い雰囲気が漂っていた。

つづく

(メドレー編成:ヘビーローテーション、followme、パレオはエメラルド、サイレントマジョリティー、セーラー服を脱がさないで、いくぜ怪盗少女、泡沫サタデーナイト、持ち歌)